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【照明ケーススタディ】No.6「灯体が限られた環境こそ、記憶卓の導入を」

※照明ケーススタディは、筆者がこれまでに担当した照明プラン・オペレートの中から、一般化できる知見を紹介するシリーズです。
なるべく汎用性のある知見を紹介していくつもりですが、他の記事群に比べると「個」が強く出ることをご理解ください。

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【公演データ】
本番時期:2012年11月
公演名:猛き龍星『熱海殺人事件 ザ・ロンゲスト・スプリング』 (作・つかこうへい 演出・小西啓介)
会場:京都大学 4共11講義室
筆者の立場:照明プランナー(大学通算9回目)兼オペレーター
仕込み図:
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※学祭の演劇企画専用特設舞台を使うので、照明は基本的に「ありもの」。
カラーフィルターと、一部の灯体(コロガシ凸、PAR64)のみ持ち込みで追加。

その他の書類:キューシート、ピンのキューシート

【記事テーマについて】
京大の学祭には「演劇企画」という枠があって、大講義室に特設舞台を組んで4日間ずっと何かしらの芝居が行われています。
最低限の設備しかありませんが、すでに舞台が組まれているので、駆け出しの劇団や、1回生の未熟な脚本家・演出家が腕を磨くために参加したりします。
照明は、シーリング・ぶっち(タッパが低すぎてトップは作れない)・単サス・バックパー・RGBのフットライト。最低限でかつ汎用性を最優先した構成になっています。
調光卓は例年、ディムパックTZ-10Aが2台です。
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この公演では、丸茂ディムパックをDMX卓でリモート操作する ことに初めて成功しました。よって、ディムパックは単なる調光ユニットとなり、本番中に触っていた卓はシーンセッターというわけです。
と言っても、ケーブル作りが間に合わず、2台あるうちの片方だけしかDMX化できなかったので、シーンセッターとディムパックを両方操作していましたが。

ここで得られた知見は、
このような最低限の灯体数だからこそ、記憶のできる調光卓を使うことが必要」ということです。

こうした簡易な仮設公演では、灯体数が少ないのはもちろん、往々にして調光卓もディムパックであったり、自作品であったりと、全手動操作の調光卓が使われがちです。
しかし、灯体数が少ない環境だからこそ、1灯体に、1回路に、様々な「役割」を持たせる必要があるのではないでしょうか。
たとえば、シーリングとトップの2種類の明かりしかない環境でも、

  • シーリング100%、トップ100%
  • シーリング50%、トップ100%
  • シーリング100%、トップ50%

などなど、明るさの比率を変化させることで様々な印象を観客に与えることができます。これは明るさ変化によって「灯体の“役割”が増加している」と考えることができます。

しかし、全手動操作では、操作のしやすさの都合上、あまりフェーダーの値を細かく指定することができません。
ひょっとしたら、明るさ30%と35%では全く違う印象を与えることができるかもしれないのに、手動操作では5%単位の操作が難しく、その機会を逃してしまうのです。

以上のような理由から、灯体や回路数のリソースが限られた環境であればあるほど、シーン記憶のできる卓を使用して、より繊細な照明シーンを作る必要があるのではないでしょうか。

【その他の感想・知見】

  • 筆者のほかに2人、ピンオペレーターに付いてもらいました。ちゃんとしたハロゲンピン(持ち込みのERQ-10)と、既設のC8フォロー(1kWの凸で追いかけること)をシーンによって使い分けるという、今思うとよくわからないプランを立てていました。ソフトな明かりが欲しければ、ハロゲンピンにぼかしフィルターを入れればよかったと思います。
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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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