舞台照明で光に色を付けるには、「カラーフィルター」と呼ばれる、演出照明用に作られたフィルターを使います。対して、フィルターを入れない場合は「生(なま)の光」「生明かり」などと呼びます。
フィルターの素材は耐熱ポリエステルなどですが、かつてゼラチンで出来ていたので、その名残で「ゼラ」と呼ばれることがあります。
部屋の蛍光灯に色を付けたい場合など、舞台照明以外の分野でも知っていれば便利なものです。
まずはポリカラーから
日本で照明をするなら、まずは東京舞台照明が作っている「ポリカラー」を使ってみましょう。
ポリカラーは全70色程度。初めて知ったときは「そんなに多いの!?」と思うものですが、世界的に見れば少ないほうです。
色には2桁の番号(色番号)が付けられていて、十の位を見ればだいたいどんな色か予想できるようになっています。
- 10番台…ピンク
- 20番台…赤
- 30番台…オレンジ(アンバーとも言う)
- 40番台…黄
- 50番台…緑
- 60番台…青緑~水色
- 70番台…青
- 80番台…濃い青~紫
きれいなグラデーションになっていますね。日本人は虹の色を「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の7色だと言いますが、だいたいその感覚に合った色分けになっています。
本当は一の位も順番にグラデーションになっていると良いのですが、そうはなっていません。
また、最近になって追加された新色は「783」など、番号が3桁だったりします。「783」は「70番台」になります。つまり青系のフィルターです。「78.3」のように小数点が付いていると理解すれば良いでしょう。
さらにポリカラーのカタログを見ると、「BL-1」「FR-4」などの変な番号も並んでいます。これらは写真や映画など、カメラ撮影用に色を補正する目的で作られた「エフェクトフィルター」ですが、演劇などでは普通のカラーフィルターと区別なく使われます。薄味でなかなか良い色です。
どこで買うの?
ポリカラーは有名なので、いろいろなところで買えます。せっかくインターネットがある世の中なので、まずはネットショップから。
- 東京舞台照明ネットショップ
本家本元。まずは見本帳を手に入れることをおすすめします。 - サウンドハウス
こっちでも買えます。 - 日本コーバン、アカリセンター
ポリカラーとほぼ番号が同じ「ウルトラカラー」を売っています。ポリカラーに無い色も。
ネットショップ以外では、東急ハンズで扱っている場合があるとかないとか。近所に照明会社の事務所などがある場合は、そこで売ってくれることもあります。急に必要になった時のために、ネットショップ以外も知っておくと良いかもしれません。
海外フィルターも
ポリカラーに慣れてきたら、海外のフィルターも使ってみましょう。ポリカラーとは色番号の付け方が違います。
- GAMカラー…川本舞台照明、GONGインターナショナルで取扱い
GAMはポリカラーと色番号の付け方が似ているので馴染みやすい - ロスコスーパージェル・ロスコラックス…日本コーバンで取扱い
- LEEフィルター…伊東洋行、アカリセンターで取扱い
ポリカラーに比べると色数が多いし単価が高い(=適当に買って試してみるのが難しい)ので、まずは見本帳を請求することをお勧めします。参考までに、LEEフィルターの見本帳は1,000円程度でした。
↑LEEフィルター見本帳とポリカラー見本帳。LEEの色の多さが分かる。ちなみにLEEは色番号が「作った順」なので、不規則
ポリカラーは基本的な色が揃っていて良いのですが、濃い色が多いのが欠点だと個人的には思っています。生明かりと混色すると良い感じになるのですが、単発の色明かりを何色も使うと、それだけで「やたらカラフルな舞台だなー」という印象が……
そんな時に、海外フィルターに手を伸ばしてみると、新たな発見があるかも?
見本帳は懐中電灯で見よう
カラーフィルターの見本帳を手に入れたら、蛍光灯ではなく、豆電球の入った懐中電灯(LED懐中電灯ではなく、豆電球のもの)にかざして見ることをおすすめします。
なぜって?
蛍光灯の光と電球の光って、色が違いますよね。
- 蛍光灯は「すごく白い」イメージ、
- 電球は「オレンジ色~薄黄色」のイメージ
を、みなさんお持ちかと思います。
舞台で使う照明器具のほとんどは電球を使っているので、電球の懐中電灯にかざして見た方が、色の感じがつかみやすいわけです。
「電球色の蛍光灯」「電球色のLED」などもありますが、本物の電球とはやはり色の見え方が違うので……
……ところで、今述べた「電球の、オレンジ色~薄黄色っぽい光」を、「蛍光灯の白い光」に変えてくれる、
またはその逆をやってくれる、そんなカラーフィルターがあったらいいと思いませんか?
実はあるんです。
ポリカラーのカタログを見ると、この記事では一切触れなかった、「A-1 , A-2 , A-3 …」「B-1 , B-2 , B-3 …」など謎の番号が入っています。
それです。
これを理解するには、「色温度」という考え方を知らなければなりません。
詳しくは次の記事で!
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