舞台で使われる電源コネクター(差込接続器)のうち、「平行」と呼ばれるタイプについて説明します。
平行 (Ⅱ型) コネクタ |
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【コネクターの基礎用語】
オス(♂)…「差し込む側」のコネクタ
メス(♀)…「差し込まれる側」のコネクタ
プラグ…オス(♂)と同じ意味
コネクタボディ、ボディ、ボデー…メス(♀)側のうち、延長コードの♀側などに使うもの
コンセント…メス(♀)側のうち、壁などに埋め込まれたり固定されているもの
定格電圧…その電圧までは恒常的にかけてよい電圧。舞台用コネクタは「125V」か「250V」。
※実際に流れてくる電気の電圧ではない。日本の劇場で実際に流れてくる電気は 100V か 200V。
定格電流…その電流までは恒常的に流してよい電流。定格電圧とともに、コネクタに「125V 20A」などと刻印してある。
形状と特徴
刃が平行に2本配置されている形状から、俗に「平行」とか「Ⅱ型」と呼ばれます。当ブログでは「平行」で統一しています。
海外旅行のガイドブック等で様々な国のコンセント形状について解説されるときは「Aタイプ」などと呼ばれますが、舞台照明の文脈で「A型」と言うと別のコネクタを指してしまうので、「平行」と呼ぶのが最も無難な呼び方です。
規格上はT型と同じく、JIS C 8303「配線用差込接続器」の中にある、平刃・2極・定格15A125Vのコネクタです。
また、アメリカ規格のNEMA 1-15 (アース無し)、NEMA 5-15 (アース有り) と互換性があります。
このうち NEMA 5-15 と同じ、アース (保護接地) 用のピンが追加されたものは俗に「3Pの平行」「平行3P」などと呼ばれます。(正確には「2P接地極付」というようにアースは○Pのカウントに入れないのですが、通常「3Pの平行」と言えば誤解のおそれは無いので、当ブログでもこの名前で呼びます。)
舞台照明では、「雑電」と呼ばれる劇場の一般電源と区別する目的もあってあまり使わないコネクタでしたが、最近になって海外製の安価な調光ユニット (American DJ、Lite-Puter等) やLED灯体などがアメリカ・日本向けに平行を採用しており、劇場で見かける機会も多くなってきました。
▲調光ユニットの出力端子として平行が使われている例 (Lite-Puter / DX-404)
一方で、一般家庭に使われるコネクタと全く同じであることから、
- 常に誤接続の可能性がある (例:調光ユニットに掃除機を接続して壊してしまう)
- 延長コードや電源ケーブルに粗悪品や舞台での苛酷な使用に堪えないものが紛れ込む可能性がある
というリスクを負うことになります。
とは言え、安価で汎用なコネクタを使うメリットは十分にあり、適切なケーブル使用と誤接続防止措置に努めた上で、更なる普及が期待されます。
代表的なコネクタ品番
平行コネクタは汎用品であるがゆえに、用途に応じて様々なコネクタが作られています。
舞台照明・舞台音響用途として定評があるのは、以下に挙げるコネクタたちです。
ホームセンターでは手に入りづらいものもあるので、その場合は下の方の一覧表に第2候補を掲載しています。
【アース無し(2P)】
- Panasonic WF52153 “タフキャップ”
その名の通り、頑丈なプラグです。キャブタイヤケーブルにも対応しています。しかし、対応するタフシリーズのメス側が無いのがネック。このため、メス側だけゴムコネクタボディにしたり、後述するアメリカン電機の3P仕様にしたりすることがあります。
【アース有り(3P)】
- アメリカン電機 7112GN(プラグ) / 7114GN(ボディ)
非常に頑丈で業務用として定評のあるコネクタです。高級感のあるグレー色も良い感じです。 - Panasonic WF5015 “タフキャップ”
上で紹介したWF52153のアース有りバージョンです。同じく適切なメスがゴムボディくらいしか無いため、メス側だけアメリカン電機を使うこともあります。
電線の接続には圧着端子でも巻締結線でもない、「引締結線」という方法を使います。圧着端子を使わずに引っ張り強度が保てるので便利です。
【アース有り・無し兼用】
- 日動工業 ポッキンプラグ
メス側はアースの有無に関わらず差し込むことができますが、アースのある♂をアースの無い♀に差し込むことはできません。そこで、アースピンを簡単に折りたためるようにしたプラグが発売されています。便利ですが、緑色でちょっとダサい…… - ハタヤ ニュートビプラグ
こちらも目的はポッキンプラグと同じですが、本体を捻ることでアースピンが引っ込むという凝った構造になっています。黒色もあるので、舞台用途ならこちらの方がベターかも。
コネクタ選定時の注意点
- 平打ち用のコネクタをキャブタイヤに使わない
このような平打ち (平形コード) 専用のコネクタをキャブタイヤケーブルに使わないようにしましょう。
下の画像のように、キャブタイヤは内皮が露出した状態では劣化しやすく、ショートや感電の原因になります。
- コネクタに合った適切な電線と接続方法を選ぶ
平行はとにかく雑多なケーブルが生まれがちです。コネクタを選定する際は必ずメーカーの商品ページ (例:WF52153) の商品仕様書を見て、適切な電線 (種類と太さ) を選択してください。また、コネクタによっては圧着端子結線を認めていないものがあります。できる限り圧着端子に対応したコネクタを選ぶべきですが、事情があって選ぶ場合は仕様書に従い、巻締結線で製作してください。
その他の平行コネクタ
とりあえず一番種類の多いPanasonicのものを集めてみました。何かの参考になれば。
画像 (オス) |
Panasonic型番 | Panasonic商品名 | 備考 | |
オス | メス | |||
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WH4415 | WH4615 | ベター小型キャップ(オス) ベター小型コードコネクタボディ(メス) |
一番よく見るやつ |
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WH4015 | (WH4615) | ベターキャップ(オス) | ベター小型より少し大きい。明工社のものが作りが良くてオススメ |
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WH4021 | (WH4615) | スナップキャップ(オス) | ムービープラグとも言う |
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WH4019 | ― | コーナーキャップ(オス) | ― |
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WH4029 | ― | ローリングキャップ(オス) | ― |
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WH4000 | (WA1219) | ポニーキャップ(オス) | レトロなコネクタ。 構造が簡素なので急ごしらえにも |
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WF5215 | WA1219 | キャップ(オス) コードコネクタボディ(メス) |
圧着端子不可。タフキャップの方が良い |
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WF52153 | ― | タフキャップ(オス) |
舞台照明用としておすすめ |
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WH4007 | (WA2219) | ゴムキャップ(オス) | コードグリップが無いタイプ。圧着端子不可だがホームセンターでよく手に入るので、タフキャップが手に入らない場合の第3候補 |
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WF4215 | WA2219 | ゴムキャップ(オス) ゴムコードコネクタボディ(メス) |
明工社の方が見た目が良い。タフキャップが手に入らない場合の第2候補 |
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WF7215 | WA3219 | 防水ゴムキャップ(オス) 防水ゴムコードコネクタボディ(メス) |
― |
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WF8715 | WA6219 | 抜止防水ゴムキャップ(オス) 抜止防水ゴムコードコネクタボディ(メス) |
メス側が唯一の抜け止め仕様 |
【アース有り】
画像 (オス) |
Panasonic型番 | Panasonic商品名 | 備考 | |
オス | メス | |||
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WF7002 | WA1519 | キャップ(オス) コードコネクタボディ(メス) |
タフキャップかアメリカン電機にした方が良いが、手に入らない場合第3候補 |
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WF5015 | ― | タフキャップ(オス) | ― |
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WF7004 | ― | 小型ゴムキャップ(オス) | 圧着端子使用不可 |
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WF7005 | ― | ゴムキャップ(オス) | タフキャップorアメリカン電機が手に入らない場合の第2候補 |
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WF75159 | WA3519 | 防水ゴムキャップ(オス) | メス側に絶縁被覆付き圧着端子が必要 |
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WF5018 | ― | 医用キャップ(オス) | なぜかオーディオ界隈で人気 |
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