舞台照明用カラーフィルター (ゼラ) の切り方

光に色を付けるには (カラーフィルターと色番号) の記事で、舞台照明に使用するカラーフィルターについて紹介をしました。

こうしたカラーフィルターは通常、570mm×450mm という大きさを1単位として販売されています。コンバージョンフィルターの場合や、撮影系機材の専門店で購入した場合は、570mm×650mm (映画版と呼ばれる) の大きさの場合もあります。

一方で実際に舞台照明で使用する大きさは、せいぜい245mm×245mm (8インチ灯体用フィルター枠の外径ギリギリの大きさ) までであり、購入したフィルター類は必ずカットしてから使用することになります。

このとき、無造作に切ってしまうと面積効率が非常に悪くなってしまうので、効率の良いフィルターの切り方を知っておく必要があります。

目次

フィルターサイズの考え方

まずは、自分が相手にする現場でよく使われるフィルターの大きさを把握する必要があります。基本的には、フィルター自体の大きさは、フィルター枠 (色枠) の開口径以上、外径以下になっていれば良いです。下図の寸法D以上、寸法A/B以下になっていれば良いでしょう。なお、丸くカットする必要はありません。

JATET-L-9410-1「演出空間用照明器具のフィルタホルダ及びフィルタホルダ枠の寸法規格」より。

ところで、あまりに下限値 (寸法D) ギリギリでカットすると、フィルターが枠内でズレて、一部フィルターが掛かっていない「ナマ」の光が漏れ出てしまう場合があります。これを「ナマモレ」と言います。ナマモレは特に青のフィルターなど、濃い色を使った演出を台無しにしてしまうので、必ず避けるべきです。

この記事では、ナマモレ防止の安全寸法として、D + (B-D)/2 + 10mm を提案します。フィルターが枠内で一番下まで落ちたときに、さらに10mm (1cm) 余裕を見た寸法です。本当は外径 (寸法B) ギリギリでカットできればベストなのですが、少しでも効率よく取りたいと思ったときに、ある程度妥協する必要はあるでしょう。

フィルターサイズの種類

上記を踏まえて、代表的なフィルターのカットサイズを列挙してみましょう。

種類下限値(開口径)安全値 (開口径+(外径-開口径)/2+10)上限値(外径)出典
4.5インチ用□124mm□147mm□150mmJATET(*1)
ソースフォー用□127mm□153mm□159mmETC,裏方屋ウェブサイト他
6インチ用□164mm□189.5mm□195mmJATET(*1)
8インチ用□204mm□234.5mm□245mmJATET(*1)
10インチ用□259mm□287mm□295mmJATET(*1)
LHQ-100W用118x84mm142x108mm146x112mm丸茂電機ウェブサイト
(*1) : JATET-L-9410-1「演出空間用照明器具のフィルタホルダ及びフィルタホルダ枠の寸法規格」より。

このほか、ホール常設のホリゾントライト・ボーダーライトでも大量のフィルターを消費しますが、これらはメーカー・型番により枠のサイズがまちまちであるため、割愛します。また、ホリゾントやボーダーでは特にナマモレに注意する必要があるため、枠いっぱいの大きさでカットすることが望ましいでしょう。

あとは、これらの下限値 (できれば安全値) 以上、上限値以下のフィルターサイズを、大判 (570mm×450mm) から何枚取れるか?最も効率の高い敷き詰め方を考えれば良いことになります。

フィルターカットの実例

ここからは、筆者が見聞きしたことのあるフィルターカットの実例をいくつか紹介します。

6インチ6枚と端切れ

長辺(570mm)を3等分し、□190mmの6インチ用フィルターを6枚作ります。
定規などが無くても折り目だけで作れるのがメリットです。
ただし、70mm×570mmという長大な端切れが出てしまいます。筆者の場合はこの端切れをPAR16K-1など極小灯体のフィルターとして再利用するので最終的に端切れは出ませんが、他に用途がない場合は、セロテープでつなぎ合わせて、もう1枚6インチフィルターを生成するという手もあります。

8インチ4枚+ソースフォー3枚

ソースフォー/4.5インチ兼用を3枚と、8インチ用を4枚取る方法です。この方法はまったく端切れが出ません。しかし、寸法がかなりギリギリで「安全値」未満なので、それぞれ微妙に長方形にしないとナマモレのリスクがあります。

8インチ、6インチ、LHQ

藤井直(2014)『ステージ・舞台照明入門』p.110に掲載されている切り方です。8インチがかなり長方形気味ですが、いろいろなサイズを1枚から取れるメリットがあるでしょう。LHQ4枚の代わりに8インチをもう1枚取っても良いと思います。

ソースフォー、LHQ

こちらも、藤井直(2014)『ステージ・舞台照明入門』p.110に掲載されている切り方です。4インチ (4.5インチを指す通称) と書いてありますが、実際は□150mmなので、ソースフォーにも兼用で使えます。これを9枚と、余った部分でLHQ用を作る方法です。ソースフォーをメインで運用している場合や、4.5インチ用 (T1-500W用など) のフィルターが足りない場合に使うと良いと思います。

これ以外の取り方をご存じの方がいらっしゃったら、コメント頂けると幸いです。

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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