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【照明ケーススタディ】No.11「白い劇場での照明」

※照明ケーススタディは、筆者がこれまでに担当した照明プラン・オペレートの中から、一般化できる知見を紹介するシリーズです。
なるべく汎用性のある知見を紹介していくつもりですが、他の記事群に比べると「個」が強く出ることをご理解ください。

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【公演データ】
本番時期:2013年8月
公演名:飴玉エレナ vol.5『夏蜘蛛』(出演・演出:山西竜矢 脚本・共同演出:石井珈琲 演出補助:藤澤賢明)
会場:元・立誠小学校 音楽室
筆者の立場:照明プランナー(大学通算18回目)兼オペレーター
仕込み図:
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その他の書類: 入れ込み・パッチ表照明案を文書で説明したもの、キューシート

【記事テーマについて】
元・立誠小学校 音楽室は、ただでさえ壁と天井が白いです。(と言っても、昭和初期のコンクリート建築のままなので、だいぶくすんだ白ですが)
さらに、今回の舞台美術はすべて白で、白い箱や階段をいろいろなものに見立てて進行していくスタイルでした。

白い舞台を照明するときの注意点は、以下の3つだと思います。

  1. 「ナマ」は無性格な白というよりも、黄色~金色に見えることが(黒や木地の舞台よりも)多い。
  2. 「黒を表現する青」は、使えない。
  3. 反射が強いので、上手く利用すると反射光で顔を取ったりできる。

この公演では、この3項目について黒や木地の舞台との違いをあまり意識できていなかったため、苦労しました。
まず1.については、個人的には「金色」に感じることが多くて、中性的な色というよりは暖色寄りっぽく感じるので、補助的な明かりだからナマでいいか、という適当な考えでナマにしたところむやみに「意味が付いて」しまって困ったことがありました。無性格な色味にするには、#B-2~#B-3あたりを入れておくとよいようです。
一方で、回想のシーンや夏の夕方(まだ夕焼けという感じではないが、少し日が傾いている)の表現がナマだけでできたのは、この演目のノスタルジックな雰囲気と相まって効果的でした。
次に2.については、特に「夜」のシーンで苦労しました。ふつう演劇的には、夜の暗さは青で表現されます。特に黒い空間だと、青はよく馴染んで「暗い」というイメージを与えてくれます。しかし、白い舞台に青を当ててしまうと、どうしようもなく「青!!」になってしまって、黒と言うより青なのです。この時は青系の色は#78と#86を使っていましたが、いっそ早くフィルターが褪せてくすんでくれればいいのに、とか思っていました。
これ以降、青を使わなくても、光量や光の方向などで夜っぽさを表現する方法を研究していますが、いまだ一般解には辿り着けていない感じです。
3.は、当時はあまり考えていなかったですが、今思えば……という程度のものです。無意識のうちに、反射でけっこう明るくなることに助けられていた感じがします。

【その他の感想・知見】

  • この頃はまだ、仕込み図にフィルターの色を書いたり書いていなかったりしています(パッチ表には書いています)。仕込み効率を考えると書いて当然なのですが、当時の周りの学生劇団には書くように教わっている人が少なくて、けっこうシュート(フォーカス)になってから色を入れるような人も多かったです。
  • 図面にある「蛍光灯」は、結局使いませんでした。蛍光灯のちょっと演色性悪い感じやぼーっとした感じが欲しかったのですが、蛍光灯そのもので表現しなくても問題なかったのと、スポットな光が欲しかったことが理由です。
  • フロアもの(コロガシやSS)が無い。そんなに必要な芝居ではなかったですが、あったら幅が広がったかもしれません。未熟感あふれていますね。
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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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