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PAR56のフィルター枠の大きさが定まらない件

PAR56って中途半端なサイズのパーライトですが、小劇場では「PAR36では小さすぎ、PAR64では大きくて存在感がありすぎ」という状況が発生するため、ニッチながら根強い人気のある大きさでもあります。しかし、あまりにも大きさが中途半端であるため、フィルター枠の大きさが混迷を極めています。

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56÷8 = 7インチ

パーライトの規格「PAR○○」は、電球の直径 (インチ) に8を掛けた数字で表現されます。つまりPAR56とは直径7インチ (約178mm) のシールドビーム電球を使用したパーライトということになります。

 

この「7インチ」という半端な大きさが曲者です。

 

というのも、日本のレンズスポットライトは概ね、500W = 6インチレンズ、1kW = 8インチレンズ と相場が決まっています。7インチはこの中間にあたるため、灯体本体側のフィルター枠の大きさとしては、大きく分けて3種類に分かれてしまっています。

 

  1. 6インチ用色枠を使う
    PAR56の直径より少し小さいのを承知で、日本のJATET規格 (JATET-L-9040-1: 演出空間用照明器具のフィルタホルダ及びフィルタホルダ枠の寸法規格) に定められている6インチ用の色枠 (外径195mm) を使用する機種があります。現行機種だと Panasonic / NQ30625、過去の機種ではRDS製のPAR56が6インチ枠を採用していました。また、日本の規格ではありませんが、AltmanのPAR56は190mm角を採用しているようです。
    6inch_gelframe

     

  2. PAR56独自規格の色枠を使う
    元をたどれば最も正当なアプローチと言えるかもしれません。7インチは7インチであって他の規格ではない。海外から輸入されたPAR56カンは通常、独自サイズになっています。代表格と言える James Thomas Engineering (トーマス) 製の場合、外径230mm角の色枠を使用します。これに追従して、近年の安価なパーカンでも230mm角のものが多いようです。
    PAR56_gelframe

     

  3. 8インチ用色枠を使う
    日本の規格に合わせる場合でも、6インチではなく8インチの方に合わせる方針もあります。東芝エルティーエンジニアリング / AL-R-56L が8インチ枠 (外径245mm) を採用していました。
    8inch_gelframe

どれが正解なのか?

6インチ枠と8インチ枠は日本国内の規格であるため、後から舶来品として入ってきたパーライトを既存規格に合わせようとした時に、6インチと8インチに分裂してしまったと見てよいでしょう。その結果、元々の (輸入機材の規格だった)「230mm角」と合わせて3種類のサイズが発生してしまったというストーリーが考えられます。

 

どれが正解のサイズか、という問いは難しいですが……、個人的には、8インチ枠の採用はナンセンスだと思います。フィルターの運用上PAR64と何ら変わらないので、それならPAR64を使用した方が良いはず。

 

逆に6インチ枠を使用するのはある程度合理的に思えます。500Wの6インチレンズスポットとフィルター運用を共通化させることで、「6インチスポットの仲間として使ってくださいね」というメーカー側の意思表示が垣間見えます。実際にPAR56は500Wまでの電球しか無いので (日本向け100V仕様の場合) 、その意味でもこの選択は正解かもしれません。

 

RDS時代は6インチのPAR56だったのに、実質的な後継会社である東芝エルティーでは8インチになってしまったというのも興味深い現象ですね。灯体の設計思想に何らかの変化があったものと思われます。

 

私自身はPAR56を使う機会は少ないですが、好きな大きさではあります。何というか、ポケモンで言う中間進化系 (ハクリューとか) みたいな趣があっていいですよね。(?)

 

皆さんはどのサイズの「PAR56」が良いですか?

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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