STAGE EVOLUTIONのPAR16、入れる電球が無い問題

サウンドハウスさんでは昔から、PAR16 / PAR20 / PAR30 という小さい規格のパーカンを取り扱っており、非劇場空間における演出照明に一役買ってくれています。
se_par16pgee
STAGE EVOLUTION / PAR16PG 商品ページより

 

ところがサウンドハウスの小型PARシリーズはすべて電球ソケットがE26であるため、PAR16灯体に入れられる「純正な」電球が存在しないのでは?という問題が発生しています。この問題について考察します。

目次

PAR16の立ち位置と、よく使われる電球

PAR16灯体は、舞台照明用灯体の中では最も小さい部類に入るため、狭小なスペースに仕込める灯体ということで特殊なポジションに居座っています。
また、こちらの記事で紹介しているビームテックのPAR16のように、店舗装飾用のオシャレなスポットライトとしてダクトレールに吊り下げて使用されることもあります。

 

これらのPAR16灯体に対しては、電球としてはPAR型ではなく「MR16」という規格の電球がよく使われます。日本では「ダイクロハロゲン」等の名前で知られている、直径50mm (2インチ) の反射鏡付き電球です。
MR16_GX53_E11
日本ではこのうちE11口金のダイクロハロゲンが店舗照明で大量に使われており、最も手に入りやすいです。GX5.3 / GU5.3口金も光学機器によく使われているため、E11の次に手に入りやすい部類です。

 

 

E26のPAR16ランプは存在しないのか?

さて、そこへ行くと問題のサウンドハウス版PAR16はどうでしょうか?

 

商品ページの写真からも分かるように、口金はE26、いわゆる普通の白熱電球と同じ口径のねじ込みソケットになっています。
SE_PAR16ii_socket
▲灯体の直径に対してアンバランスなE26口金

 

この灯体に小型の白熱電球denkyu_iconを入れようと思えば入れられるでしょうが、それでは「スポットライト」になりません。
電球を口金別に整理しているアカリセンターさんのサイトを見ても、E26のPARランプは PAR20 / PAR30 / PAR38 しか無いように見えます。

 

……そうなると、この “E26のPAR16” に対して、前述したような、反射鏡の付いたスポット性のある電球は無いのでしょうか?

 

答えは、「一応存在はします」。

 

下の写真のような「PAR16」(MR16ではない) 規格のハロゲンランプでE26口金のものがそれです。
par16_bulb_sylvania

 

主に GE, OSRAM (Sylvania) の2社が北米市場で製造・販売しています。

 

Sylvaniaと聞いて、ピンと来た方もいらっしゃるかもしれません。過去にサウンドハウスさんが、安価なPAR56 / PAR64電球として北米120V仕様のSylvaniaランプを販売していたことがあります。定格がそもそも暗め (長寿命タイプ) なので、日本の100Vで使用すると異常に暗く、安さにつられて購入した多くのアマチュア照明家を悩ませました。

 

このSylvaniaランプが売っていた頃は、上記のPAR16ランプもサウンドハウスで購入することができました (もちろん120V仕様で暗かったですが)。ところが、Sylvaniaブランド自体の取扱いが終了したため、自動的にPAR16ランプの取扱いも無くなり、結果として灯体のみが販売されていて適合電球が販売されないという事態に陥ってしまったものと思われます。

 

これが、記事のタイトルでもある「ステエボのPAR16、入れる電球が無い問題」の発端と考えてよさそうです。

 

どう活用すればいいのか?

前述したように、PAR20 / PAR30は日本向け仕様の充分に明るい電球が存在します。(PAR20は50W、PAR30は75W)

 

よって、単に超小型のパーライトが欲しいだけであれば、PAR20 辺りを選択しても良いと思いますし、PAR16にしてもE11ソケットの灯体を購入してダイクロハロゲンで運用する手段もあるでしょう。
より汎用性を求めるなら、どこでも手に入るビーム電球の規格であるPAR38を使うのも良いかもしれません。

 

では、ここで問題の「E26のPAR16」はどのように活用すればよいのでしょうか?いくつかアイデアを示して締めたいと思います。

  • E26-E11変換ソケットを使用する
    E26_E11_convert
    「それなら最初からE11の灯体を買えば…」という話になってしまいますが、こうすれば大抵のダイクロハロゲンは使えます。

     

  • E17のミニレフランプで運用する
    reflamp-crypton-E17
    これもE26-E17変換が必要になりますが、ミニレフランプと呼ばれる25~50Wクラスのレフランプは、直径50mmのものが存在します。配光特性的にスポットライトとは言い難いですが、フラッドライトの一種として客電や作業灯に使うのもありでしょう。ただし思ったより暗いのでガッカリするかもしれません。

     

  • E26のダイクロハロゲン (MR16) をどうにか見つける
    私の知る限り国内市場向けで1品種だけ存在します。フェニックス電機の「ハロピカ」シリーズ、【JDR110V75WFKM/5E26】という型番です。末尾に「E26」と書いてある通り、E26口金の電球であり、「直径50mmでE26」を満たす唯一の製品だと思います。……これをわざわざ購入してまで使う価値がある灯体なのかは疑問ですが。

     

  • E26のダイクロハロゲン (MR16) 型LED電球を探す
    ハロゲンランプよりは多少探しやすいです。一時期ビームテック等でも「E26・直径50mm・調光対応LED」という製品が販売されていました。Amazonの中国系セラーから買うこともできますが、入れ替わりが激しく常時同じ物が手に入る保証がないのがネック。

 

注意点として、今回取り上げたPAR16に限らずですが、灯具には必ず「想定されている電球」というものが存在します。型番で指定していたり、定格ワット数と品種 (何ワット以下のこういう電球を使ってください) という形で示されます。
これは、灯具の耐熱性や付属ケーブルの定格電流など安全上の理由で製造側/販売側で決めているものです。今回は灯体に当初想定されていた電球が現在販売されていないという特殊状況のため上記の案を掲載しましたが、想定外の電球を使用することにはそれなりのリスクが伴うことを意識し、実践投入する前に異常発熱・発煙や極端な短寿命等が起こっていないことをよく確認のうえお試しください。

 

se_par16_teikaku
▲参考:STAGE EVOLUTION / PAR16 の取説から抜粋。

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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