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拡散フィルター・減光フィルターについて

光に色を付けるだけが「ゼラ」だと思っていませんか?
カラーフィルター以外のフィルターについても見ておきましょう。

目次

減光フィルター (NDフィルター)

ND_filter

色を変えずに明るさを減らすフィルターです。「グレーの色を付けるフィルター」ではありません。
「黒い光」が存在しない (光の場合は真っ黒=真っ暗となる) のと同じように、光にとっての「グレー」というのは、単に「明るさが減った状態」でしかありません。

ポリカラーの色番号は90番台。以下の3種類があります。

  • #975:明るさを75%にする。
  • #950 (旧#99):明るさを50%にする。
  • #925 (旧#98):明るさを25%にする。

#98、#99の旧番号が使われていたのは比較的最近の話なので、今でも「キュッパー取って!」という指示を受けるかもしれません。

NDフィルターは、舞台においては使いどころの難しいフィルターであることは間違いありません。どちらかと言うと、卓周りの液晶モニターの減光、非常誘導灯(緑色の非常口マーク)の減光(※) など、舞台の周辺機器に使われる方をよく見るかもしれません。

 

そもそも、舞台照明は必ず調光器を使うわけで、調光して明るさを減らせばいいんじゃないの?と、誰もが考えるでしょう。
しかし、「色温度について」の記事でも触れたように、白熱電球は調光をかけると色温度が下がります (=赤っぽい光色になります)。
よって、「ナマの色味が欲しいけど、明るさとしては過剰なんだよな…」という時にNDフィルターの出番となります。もうこの時点で、割とニッチですよね。

他には、どうしても明るさの異なる灯体を無理やりコンモで使わなければならない場合 (暗い方の明るさに合わせてしまった方がマシだという考え)。
これは雑多な灯体が混在する小劇場では比較的よくあるシチュエーションですね。

いずれにせよ、このフィルターの使い道をふと思いつくようになったら、それなりに玄人ぶってもいいかもしれません(笑)

ところで、本当に「グレー(銀色)の光」っぽい色を出したい場合、LEEフィルターの#600番台辺りを使うとそれっぽい、、かもしれません。

拡散フィルター (ぼかし、フロスト、ディフュージョン)

diffusion_filter

色としては透明ですが、光の質感を変えるフィルターです。
あれこれ説明する前に下の画像を見ていただいた方が早いでしょう。

diffusion_before_after

これは、同じ灯体、同じシュートで拡散フィルターを入れる前後の比較です。
灯体は300W平凸レンズスポットを使用しています。
壁へのタッチ明かりとして、自然さが増していることが分かると思います。

拡散フィルターの用途としては大きく2つあります。
「光の輪郭 (当たっているところと当たっていないところの差) を曖昧にする」ことと、「照射範囲を少しだけ広げる」ことです。
それぞれ具体例を挙げると…

【光の輪郭を曖昧にする】

  • 平凸レンズの灯体をフレネルレンズのように使用する
  • ピンスポを、いかにもなクッキリ円ではなく気付かれない程度のフォローで使用する
  • 平凸を絞った場合にフィラメントの影が出てしまうのをごまかす
  • パーライトのVNでフィラメントの影が出てしまうのをごまかす

 

【照射範囲を少しだけ広げる】

  • フレネルで作った地明かりがギリギリ繋がらない場合、少し拡げて地明かりとして成立させる

 

上記のように、様々な目的で使うことができます。
決して特殊なフィルターではなく、プロの方々はカラーフィルターと同じ程度に日常的に使っているものです。

代表的な拡散フィルターをいくつか紹介します。

  • ポリカラー(プラステート) #00、#D-00
    「すりガラス」のような濃いフロストのフィルターで、どんなスポットライトに入れてもフラッドライト並みにボケボケになります。凸もフレネルも関係ないレベルです。よって、極めて曖昧に照らしたい場合や、スポットライトで客電を作る場合に使うとよいでしょう。
  • Rosco/ウルトラカラー #119Light Hamburg Frost
    元々はRosco社のフィルターですが、日本のウルトラカラーでも同じ番号が出ています。「平凸をフレネルにする」場合にちょうど良いフィルターです。フレネルに入れると、光の質感を損なわずに少しだけ照射範囲を伸ばすことができます。「伸び」が長い方向と短い方向があると言われており、フィルターに「⇔119」などと記入して保管している人が多いです。

 

…まだ拡散フィルターを使ったことが無い場合、まずは上記2種類 (00、119) を「濃い拡散」「薄い拡散」として使い分けてみるとよいかもしれません。
それぞれの特徴を理解したのち、おそらく「もっとこういう拡散ができればいいのになぁ……」と思うシチュエーションが出てくるはずです。そうしたら、他のフィルターを探す旅に出ましょう。
diffusion_00_119

他のフィルターも2種類紹介します。

  • LEE #2571/4 Hampshire Frost
    平凸をぼかすときに#119を使うと、フレネルのような曖昧な光になってしまいます。それは困る、あくまで平凸らしい「○」の感じを残しつつぼかしたい!という時に役に立つフィルターです。旧型の平凸スポットで照射円の端に「虹」が出てしまう場合、それを和らげる効果もあります。何となく、雑多な平凸スポットでもCSQのような上質な光にしてくれる気がして、個人的に気に入っています。
  • Rosco/ウルトラカラー #114Hamburg Frost
    #119は “Light Hamburg Frost” ですが、こちらは light ではありません。つまり、#119を濃くしたフィルターです。#119の2枚重ね程度のボケ具合で、タッパ3m以下など、普通のフレネルでは全然地明かりが繋がらないような場所で重宝します。
    これに限らず、海外のフィルターは名前がついており、色番号に規則性が無くても「同じシリーズ」のフィルターを見分けることができます。

 

他にもこれは良いぞ!という拡散フィルターがありましたら情報お寄せください。

 

(※)非常誘導灯の減光は勝手に行わず、劇場に確認の上指定された方法で行ってください。

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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