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灯体のフィルター枠 (色枠、シート枠、ゼラ枠)と、レンズの大きさ

灯体の光学的な分類 (凸とかフレネルとかパーライトとか) は理解できたとして、実際の機材リストを見ると、「6インチフレネル」「8インチ平凸」といった表現をよく見かけます。これは灯体のレンズの直径を表していますが、「フィルター枠の大きさ」「電球のワット数」など、他の項目とも関連がありますので、押さえておきましょう。
fresnel_6in_8in.jpg

目次

平凸レンズ、フレネルレンズの場合

最も「○○インチ」という表現が多用されるのは、平凸レンズフレネルレンズの場合です。
4.5インチ、6インチ、8インチ、10インチ の4種類の大きさだけ覚えておけばよいでしょう。
それぞれ、電球のワット数とおおむね関係があります。

  • 4.5インチ (直径約113mm) …丸茂T1と、その類似機種くらいしかありません。つまり、500Wの平凸がほとんどです。4.5インチのフレネルも存在しますが、非常にマイナーです。現場レベルでは省略して「4インチ」と呼ばれることもあります。また、丸茂T1をはじめとする「4.5インチの平凸」を総称して「ベビースポット」と呼ぶことがあります。
  • 6インチ (直径約150mm) …ベビースポットを除く500W平凸・フレネルはほぼすべて6インチです。CEC-500も、CSQ-500も、DFも、FQ-500も、Q-spotも、みんな6インチです。ただし例外として、非常に古い1kW平凸など、「1kWで6インチ」になっている灯体が一部存在します。詳しくは「6インチで1kWの灯体たち」の記事をご覧ください。
  • 8インチ (直径約200mm) …1kW平凸・フレネルのほとんどが8インチです。よって、「500Wは6インチ、1kWは8インチ」と覚えても基本は問題ありません。
  • 10インチ (直径約250mm) …遠距離照射用の1.5kW~2kWの灯体に一部存在します。代表例は丸茂CLQ-2000W (CSQの遠距離バージョン) など。大きなホールでシーリング室が複数ある場合、第2、第3シーリングなどに配置されていることがあります。シーリングは特に照射距離が遠くなりがちだからです。

ごく古い500W平凸に「5インチ」のレンズを搭載したものがありますが、フィルター枠など現場の運用上は6インチと同じなので、無視しても大丈夫です。

お気づきの方も多いと思いますが、基本的に電球のワット数、つまり光量の強さに応じてレンズも大きくなっていきます。
電球からは三次元的に全方向へ光が出ているため、これをミラーを使ってレンズの方向へ寄せるわけですが、ここでレンズの直径が小さいと、せっかくレンズの方へ向かってきた光が一部無駄になってしまいます。
lens_small_muda

このため、「もっと明るく、もっと遠くへ」と考えた時にレンズの直径が大きくなっていくのは自然なことです。
しかし、いくらなんでも500Wに8インチレンズを使うと、灯体が大きくなりすぎたりして却って効率が悪い……

このあたりのバランス感覚で、現在の「500Wは6インチ、1kWは8インチ」という目安が決まっているのでしょう。

フィルター枠の規格

さて、日本の舞台照明では、上記の「レンズスポットのレンズ径」に対応する形で、フィルター枠 (色枠・シート枠・ゼラ枠) の大きさも定められています。
JATET(劇場演出空間技術協会)の規格、JATET-L-9140-1 「演出空間用照明器具のフィルタホルダ及びフィルタホルダ枠の寸法規格」をご覧ください。
JATET_L_9140_1_filterholder

つまり、フィルター (色、ゼラ) を用意する際には、ここで定められている内径(寸法D)より大きく、外寸(寸法B)以内の大きさにフィルターを切断すればよいわけです。
この記事中で「6インチ枠」のような表現をする場合、JATET規格で言う「6型」のフィルター枠のことを指します。

ちなみに、レンズスポットの例外として気をつけたいのが、「丸茂T1以外のベビースポット」と、「日照 (日本照明社) 製の灯体」です。
これらの灯体は、縦長のフィルター枠を使うなど、JATET規格とは異なる独自の仕様になっている可能性が高いです。

仕込み/バラシの時間短縮のために、自前のフィルター枠に色をセットした状態で持ち込む方も多いと思います。
その場合、雑多な灯体が混在する劇場では注意が必要です。
tatenaga_filter

パーライトの場合

パーライトは、こちらの記事でも述べたように、電球そのものの直径によってPAR36、PAR56、PAR64などの呼び名が定められています。よって厳密には「レンズの大きさ」ではないですが、フィルター枠など現場の運用が共通する部分もありますので、ざっと見ていきましょう。

  • PAR36 (直径4.5インチ) …レンズスポットの4.5インチに相当する大きさです。「ミニパー」とも呼ばれます。国産のパーカン(=灯具部分) では、4.5インチ用のフィルター枠がそのまま使用できるようになっていることが多いです。海外製のパーカンは専用のフィルター枠を使うことが多いです。
  • PAR56 (直径7インチ) …レンズスポットで言うと6インチに相当する手軽さです。フィルター枠は海外製灯体の場合専用の大きさを使いますが、国産のパーカンでは6インチサイズを使用する場合と、8インチサイズを使用する場合があります。例を挙げると、PanasonicとRDS製のパーカンは6インチ枠、東芝エルティーエンジニアリング製のパーカンは8インチ枠を使用します。
  • PAR64 (直径8インチ) …最もメジャーな大きさです。国産のパーカンでは、8インチレンズスポットのフィルター枠をそのまま使用できます。ただし、劇場によっては耐熱紙製ではなく金属製のフィルター枠を使うよう指示されることがあります。フィルター枠の開口部の方が若干小さくなることが多く、枠そのものに光が当たって非常に熱くなるためです。

 

…何だか灯体の大きさではなくフィルター枠の話になってしまいました。

なお、パーライトについては、PAR64サイズでも300W~500Wの電球が一般的に存在するため、必ずしもワット数が大きくなるとサイズが大きくなるというわけではありません。

プロファイルスポットライトの場合

プロファイルスポットライトは、機種によってレンズ径が様々なので一概には言えません。また、レンズが複数入っている場合も多く、一概に「レンズの直径」とフィルター枠を結びつけることもできません。
フィルター枠の話だけをすると、以下の3つくらいは覚えておいて損は無いでしょう。

  • ソースフォー、リクリ…専用フィルター枠 (外寸158mm)。ソースフォーとリクリの間では共通です。標準レンズ(19°~50°)以外の特殊なレンズを使う場合、フィルター枠が大きくなることがあります。
  • ウシオ製の700Wクセノンピン…6インチ枠より少し大きい専用サイズですが、ピンスポの操作時はオペレーターが張り付いて色替えを行うため、6インチ枠を手で押さえながら使用します。
  • ウシオ製の1kW~2kWクセノンピン…上記と同じく、8インチ枠を手で押さえながら使用します。

 

また、古いエリスポ (丸茂の「7C」「5C」、RDSの「940」など) やハロゲンピンスポットは、6インチ枠を使用する確率が高いです。

フラッドライト

フラッドライトは、そもそもレンズが無いのでフィルター枠だけの話になります。
こちらも機種によって様々ですが、特殊な大きさが発生しやすいです。例を挙げると、以下のようなものがあります。

  • 丸茂BNQ(バンチライト) …外寸304×306mm、内寸272×274mm
  • 丸茂LHQ(小型のロアーホリゾントライト) …外寸146×146mm

劇場でフラッドライト (ボーダーライト、ホリゾントライト含む) を使用するときは、事前にフィルターの大きさを確認するのがベストです。

 

 

フィルターの切り方

カラーフィルターや拡散フィルターなどは、最初からこれらのフィルター枠サイズに切られて売っているわけではありません。
57cm×45cmという大きなサイズを最小単位 (全紙) として販売されていることが多いです。

よって、この「全紙」状態から、いかに多くのフィルターを切り出すかという話になります。
ここからは灯体ではなくフィルターの話になりますので、別で記事を作ることにします。

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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