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舞台照明におけるT型コネクタの「使用禁止説」について

なんの話かは分かる人だけ分かればいいです。
事実と私の見解を述べます。
【まとめ】

  • 事実:T型コネクタの使用は「法律で」禁止されたわけではないが、それなりに強制力を持つ省令解釈によって、新規使用を全く推奨されないことになった
  • 事実:その理由としては、「100V系と200V系で同じコネクタを使うべきでない」というもの
  • 事実:T型コネクタはJIS規格 (JIS C 8303 配線用差込接続器) から削除されていないし、今も新規購入することは可能
  • 事実:ただし、T型は100V系での新規施工が実質禁止され、200V系は保護接地 (アース) の付いたコネクタを使うことが別の文脈で決まっているので、挟み撃ちで新規施工にはどこにも使えないということになる
  • 事実:今後のことはともかく、いまT型で施工されている調光設備は多く存在する
  • 筆者私見:民間の小劇場などで、すでにT型で施工された設備においては、予算の都合などからミニC型への移行は難しいと推察する
  • 筆者私見:民間の小劇場をこれからオープンする場合には、設備のコンセントとしてはT型の施工をやめて、T型の灯体が持ち込まれた場合は変換コードで対応することが望ましいと考える

 

目次

事実

  1. 公文協テキスト「初歩の舞台照明技術」 p.66
    koubunkyo_Tconnector.png
    1段落めの文章が若干乱れており、事実が掴みにくい。
    なお、途中に出てくる「T型20AコンセントをC型20Aコンセントに取り替える作業は、電気工事士にて行なうこと。」という文章における「コンセント」とは、家庭では壁に埋め込まれており、劇場ではサスバトンなどに埋め込まれている固定設備の♀側コネクタを指す。いわゆる延長コードや変換コードのコネクタは、「コンセント」とは呼ばない。変換コードを自前で製作することは規制されていない。
  2. JATET-L-6060-4 演出空間専用差込接続器D型20A規格
    image 
    「法規改正」という見出しだが、本文を読むとその「法規」とは法律ではなく「電気用品技術基準」=「電気用品の技術上の基準を定める省令」という省令であることが分かる。
    さらに、当時の版を見られないので推察だが、実際には「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」(電技解釈) に書かれていた内容であることが考えられる。
    「法律」ではないが、相当強い力を持つ法規類ではある。

 

筆者私見

公共ホールについては、行政の予算都合などもあり「なるようにしかならない」ので、当ブログが注力しているアマチュアの範疇について私見を述べます。

  • 民間の小劇場などで、すでにT型で施工された設備においては、予算の都合などからミニC型への完全移行は難しいと推察します。
    電気的に問題が起こっていなければ、直ちにT型を全廃しなければならないとは考えられませんし、 全廃しさえすればよいという問題でもないと考えます。また、「順次置き換え」なども、変換コードの数が多くなり、利用者の混乱を招くばかりで全く合理的ではありません。置き換えるなら一斉に
    ミニC型が予算上難しい場合、平行アース付き (いわゆる平行3P)PowerCon True1 (活線挿抜が可能な新型パワコン) などが代替の選択肢として考えられます。

  • 民間の小劇場をこれからオープンする場合には、設備のコンセントとしてはT型の施工をやめて、T型の灯体が持ち込まれた場合は変換コードで対応することが望ましいと考えます。
    なお、エアコンなどに使われるいわゆる「IL型」は、コードコネクタボディ (=延長コード用の♀) が存在しないため、残念ながら舞台での実用に堪えません。(これさえ解決してくれれば……)

  • T型が使われ続ける理由は、単に現場の舞台関係者の怠慢ではないと考えます。T型は民生品であり、丈夫なコネクター類がミニC型に比べ非常に安価に手に入ります。また、上述したようにIL型20Aコネクタが「延長コードが作れない」という些細な理由で舞台用に使えないことから、「20A」という定格電流にこだわる場合、最も安価で実用的なコネクタはT型に“なってしまう”のです。
  • 学校の体育館などでT型のサスバトンがある場合は、少なくとも20年は経過した設備であるため、むしろコネクター以外の部分の劣化損傷 (ケーブル被膜の劣化、ブレーカーの老朽化、サスバトンの吊下ワイヤの劣化など) が考えられます。
    特に学校設備はメンテナンスが粗末になりがちなので、T型を廃止するとかしないとかの問題ではなく、T型の設備があるかどうかを一種の「年代測定法」として、日頃のメンテナンスのきっかけとすることが望ましいと考えます。

    なお、灯体 (スポットライト) については「電気設備」と異なり、適切な修理を行えば長く使い続けられる性質のものであるため、T型世代の灯体があるからと言って廃棄したり使用を禁止したりする必要はありません。

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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