画像出典:大庭三郎(1955)『舞台照明の実際』,オーム社,p.58
※記事中にMFであるという明言は無いが、「丸茂電機の新製品」として紹介されているため、MFに同定する。
★これは非常に古い機種で現存数が多くありません。あなたの周りで「MF」と呼んでいるのは MS-1000W の可能性がありますので、そちらもご覧ください。
【機種名】MF型 (1000W?)
【メーカー】丸茂電機
【製造年代】1954年~1960年代? (丸茂電機社史によれば1954年完成、[近代史]によれば1958年発売)
【レンズ径】8インチ
【適合電球】1000W白熱電球/E39口金
【電球の例】G100V1000W、EG100V1000W(エコラム)、JP100V1000WB/E(ハロゲン)
※出典で[近代史]とあるのは、日本照明家協会(1992編)『日本舞台テレビ照明近代史』のこと。
【コメント】
1955年の本で「新製品」と書かれていて、かつ MF-500W によく似ているので、おそらくこの写真が国産最初のフレネルスポットの1つ、「MF型」でしょう。
龍電社(RDS→現・東芝エルティーエンジニアリング)も同時期に最初のフレネルスポットを作っていたようですが、映画用にターゲットを絞った大きなものであった可能性があります。[近代史,p.90]
テレビスタジオ用で8インチということですので、1000Wか、ひょっとしたら1500~2000W程度までの電球が使われたかもしれません。
[近代史]によれば、メーカー側は初め、「スポットライト」なのに広い範囲を照らすフラッドな明かりを持つものが欲しい、というのは一体どういう要望なのか理解できなかったといいます。
日本にはまだ平凸レンズスポットしかなかったので、スポットライトと言えば輪郭がクッキリしていて、単サスのような狭い範囲を照らすものだという考えしかなかったのです。(当時、トップの地明かりは単独式のフラッドライトで取っていました)
フレネルスポットが「スポットライトとフラッドライトの中間」だということがよくわかるエピソードですね。
もちろんご存じの通り、この後フレネルレンズはテレビだけでなく舞台にも進出し、サスバトンに吊られていた単独式フラッドライトを追い出して地明かり用灯体の座に君臨していくことになります。
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