丸茂電機 KLS型 カーボンアークスポットライト

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【機種名】 KLS型
【メーカー】丸茂電機
【製造年代】1930年?~1960年代?
※[近代史]p.107に、昭和5年に「KL型アークスポット完成」という記事あり。このKL型のシリーズの一種がKLS型ならば、1930年発売と言える。

【レンズ径】不明(おそらく6インチ)
【適合電球】電球ではなくカーボン棒

※出典で[近代史]とあるのは、日本照明家協会(1992編)『日本舞台テレビ照明近代史』のこと。

 

【コメント】
クセノンランプや高出力のメタルハライドランプが登場する以前は、投光距離が長く、明るさが求められる「フォロー」(人物を追いかける照明)の用途には、カーボンアーク光源が使われていました。
電池の+極-極にシャーペンの芯を繋いで近づけると放電現象を起こしますが、あれを巨大にしたものです。

 

当然カーボン棒は燃え尽きていくため、放電を起こし続けるために、フォローオペレーターはフォローしながらカーボン棒間の距離を調節するという職人芸を強いられていました。そのため、灯体背面には4つものダイヤルがついています。(アイリス開閉・+側カーボン棒位置調整・-側カーボン棒位置調整・フォーカス)

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↑カーボンアークスポットの内部

 

放電は直流でも交流でも起こせますが、直流の方が電弧が点光源に近かったらしく、直流の方が好まれました。
どうやら交流の方が若干放電を維持するのが簡単だったようで、その点でも職人からは「交流アーク」は下に見られていたようです。

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↑整流器。交流100Vを受け、直流のおそらく70V~100Vあたりに変換している

 

このKLS型は、カーボンアークスポットの中では比較的小型のもので、のちにハロゲンピンやメタハラピンで置き換えられていったクラスのものと思われます。(大型のものは現在クセノンピンが使われています)
フォロー用にもかかわらず、ピンスポのような光学系ではなく、光学的にはただの平凸レンズスポットライトです。
よって、ピンスポに比べてシャープな(輪郭のクッキリした)明かりが出ないという意味で、「ソフトアーク」などと呼ばれていたようです。

 

 

一度点灯しているところを見てみたいのですが、どこかまだ現役で使っているところありませんかねえ……

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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コメント一覧 (2件)

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    1968年4月から1973年3月まで、丸茂のカーボンアークスポット使っていました。浪人時代から大学を卒業するまでの5年間。場所は赤坂。今は無き、ニュージャパンホテルの地下。「クラブ・ニュウラテンクオーター」の電気室。ショウタイムが長いときは、カーボンの交換が大変でした。やけどをしたこともあります。革製の軍手が欠かせません。卒業後、火災によるホテルの消失とともにクラブも消えました。しかし、この5年間は大きな財産となりました。可能ならば、生きているうちに、もう一度、アークスポットい触れてみたい。

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