照明仕込み作業のうち、「パッチ」と呼ばれる作業の実際について解説します。
「パッチ」はあくまで調光卓の機能なので、実際のところ「調光卓の機種によって異なります」としか言えないのですが、なるべく共通項を解説します。
「パッチ」とは何なのかご存じでない場合、まずは「パッチって何だろう」の記事をお読みください。
この記事で言う「パッチ」とは、すべていわゆる「ソフトパッチ」のことを指します。ソフトパッチ以外のパッチ方法として「強電パッチ」がありますが、それについては別の記事で扱います。
また、この記事は一般照明用のフェーダーがたくさん並んでいる調光卓を想定しています。ムービング卓におけるパッチ方法はこの記事で紹介するものとは少し異なります。
フェーダー番号とディマー番号の対応を作る
「パッチって何だろう」の記事で解説した通り、パッチとは「フェーダー番号とディマー番号 (DMXアドレス) を結びつける」ことです。

要するに上の画像のような結び付け作業ができれば良いのです。
ということは、
- 「フィーリングカップル」みたいな画面を調光卓に表示して、
- タッチパネルで結び付ける
ようにすればベストか?と思うのですが……

技術的な問題もあって、これを実現している調光卓はごく少数です。(PC卓のDoctorMXなど)
そこを何とかするべく、調光卓メーカーは機種ごとにいろいろな「パッチ設定モード」を考えてきました。
代表的なパッチの仕方を、数種類紹介します。
すべてテンキーで行う方法
要するに「ディマー番号 (DMXアドレス)」と「フェーダー番号」を入力できればよいので、0~9までの数字を書いたキーボードがあれば可能ですよね。

この方法は単純ですが、「画面表示が無いと、どのフェーダーに何をパッチしたか忘れてしまいがち」という問題があります。
そこで、ある程度大きな表示画面を持つ機種では、リスト形式でディマー番号 (DMXアドレス):フェーダー番号の対応を一覧表示してくれるものが多いです。

コンセントの位置から選ぶ方法
市民会館ホールなど、常設の劇場にある固定設備では、いろいろな場所に「照明用コンセント」が伸びていますが、これらのコンセントはディマーに直接つながっている場合が多く、「コンセント番号とディマー番号 (DMXアドレス) は1対1で対応している」と言えます。
ということは、もはや「ディマー番号」は「1,2,3,4…」という単純な番号ではなく、「下手の床コンセントA,B,C…」「第1サスバトンの…」など、「コンセントの位置」で呼ぶことができるようになります。
このような「ディマー番号=コンセントの位置」となる劇場では、
- 調光卓の画面にコンセントの位置を表示して、
- コンセントの位置をマウスやキーボードで選び(=ディマー番号を選んだことになる)、
- それをパッチしたいフェーダー番号を選ぶ
という方法が使われます。「どこのコンセントにつないだ灯体か」が分かりやすいので、直感的な方法といえます。

画面上の位置がコンセントの位置にほぼ対応している。画面の左―右=舞台の下手―上手、画面の上―下=舞台の奥―手前。
フェーダーや、ボタンを触る方法
テンキーや大きな表示画面は場所を取るので、大劇場向けの大型調光卓でなければ使えません。
そこで、小型の調光卓では、フェーダーと最小限のボタンだけでパッチ機能を実現しています。

上に示したのは「ELATION / シーンセッター」のパッチ方法ですが、
- 「UP」「DOWN」の2つのボタンでディマー番号を選び、
- それをパッチしたいフェーダーの下のボタン(フラッシュボタン)を押す
という方法を使っています。
また、「ライトコマンダー12/2」や「ベリンガー / LC2412」では、
- 先にフェーダーの下のボタンを押し、
- そのフェーダーで操作したいディマー番号をダイヤルで選ぶ
という方法を使っています。

シーンセッターとは対照的に、「フェーダー番号を先に選ぶ」というパッチ方法です。
「フェーダーの下のボタン」が無い場合は、フェーダーそのものを触る(少し動かす)こともあります。
ETC / SmartFade のように、「フェーダー先、ディマー後」でも「ディマー先、フェーダー後」でも両方できる卓もあります。
パッチ作業の流れと用語
実際のパッチ作業の流れとしては、以下のようになります。
- 仕込み前に、フェーダー番号とディマー番号の対応表を作っておく
(吊り込み図の中に書き込んでもよいし、別紙で用意してもよい)
(初めて行く劇場などで、ディマー番号が予測できない場合は、空欄にしておく)
吊り込み図に書き込む場合
別紙で用意する場合 - 吊り込み(灯体設置)中に灯体の位置やディマー番号に変更があった場合、メモしておく
(空欄にしていた場合は、仕込みながら書き込んでいく) - 調光卓へ行き、調光卓のパッチモードに入る
- 作成した対応表を見ながら、ディマー番号:フェーダー番号の対応を入力
(ディマー番号を選んだ時に、それを点灯してくれる親切な調光卓もある)
※劇場スタッフの方にやってもらう場合は、ディマー番号とフェーダー番号のどちらを先に言った方がよいか確認しておく(上で紹介した通り、ディマーを先に選ぶ場合とフェーダーを先に選ぶ場合の2種類があるため) - 完成したら、フェーダー1番から順番に点灯してみて、間違いが無いか確認
また、パッチ作業に関係する専門用語もあります。
- パッチを払う…一旦決めたパッチを解除する。リセットする。英語では “open” “clear” など。
- 1対1パッチ(ストレートパッチ)…「フェーダー番号=ディマー番号 (DMXアドレス)」になるようなパッチ。パッチ機能が無い調光卓と同じ状態にすること。灯体をどのディマーに差したか分からない場合などに、この状態にして調べることがある。
画像出典
- フィーリングカップル…http://www.net-hp.co.jp/shop/html/products/detail.php?product_id=13
- パッチ用テンキー…筆者撮影
- パレータスのパッチ一覧画面…筆者撮影
- マリオネットスターのパッチ画面…マリオネットスターの取扱説明書 http://www.marumo.co.jp/dataservice/pdf/console/marionet_star_v61.pdf
- シーンセッターの画像…シーンセッターの取扱説明書
- LC2412の画像…LC2412の取扱説明書 http://www.behringer.com/assets/LC2412_P0058_M_JP.pdf
- 「吊り込み図に書き込む場合」…筆者自作
- 「別紙で用意する場合」…筆者自作 (月面クロワッサン番外公演『無欲荘』にて、実際に使ったもの)
吊り込み図に書き込む場合
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