前回の記事で、「フェーダーを上げ下げすると明るさが変わる」という仕組みには、調光卓と調光ユニットの2つが関係していることが分かりました。
ここでは、調光ユニットの役割について、もう少し詳しく見てみましょう。
調光ユニットの存在意義
さて、舞台照明が、ふつうの家の照明と大きく違うところのひとつに、
「明るさを変えることを必要とする場合が多い」というのがあると思います。
「だんだんと夕日の明かりが強くなっていくことで時間経過を表す」
「10秒かけて真っ暗になっていく」
「青のフィルターを入れた灯体と赤のフィルターを入れた灯体を並べて、だんだん青から赤へ変わっていくようにする」
――これらの演出には必ず「明るさを変える装置」が必要です。
現在の舞台照明で、LEDなどの新しい技術ではないただの電球(白熱電球、ハロゲン電球)の明るさを変える役割は、「調光(ちょうこう)ユニット」と呼ばれる装置が担っています。
調光ユニットとは?
一言で言って、
調光ユニット=分電盤+調光機能
です。
いやいや、まず
「分電盤」とは何ぞや?
みなさんのお家にこういうの↓ないですか?
これが分電盤です。
分電盤は、(普通の家にあるものの場合、)中身は下の図のような構造になっています。
(電気工事士くらいの知識のある方から見れば突っ込みどころ満載ですが、目をつぶって雑な単線図とでも思ってください^^; あと、あえてJIS準拠でない俗っぽい単語も使います。ブレーカ「ー」とか「電気」とか。)
すごく大ざっぱに言えば、
電柱からもらった電気を家のあちこちのコンセントや照明などに分ける場所
です。
分電盤は
- 主幹ブレーカー(親玉のブレーカー。こいつを落とすと家の電気が全部止まる)
- 分岐ブレーカー
- それらを繋ぐ電線(赤い線で書いています)
から構成されています。主幹と電柱との間は、家1軒分の電気をまかなえる太めの電線が通っています。
電線は太い方が流せる電流が大きいのは、イメージしやすいと思います。
話を調光ユニットに戻しましょう。
劇場の「調光ユニット」も、分電盤と同じく、主幹ブレーカーから各回路へ電気を分けるはたらきを持ちます。
大きな劇場では、調光ユニットは地下室などに埋め込まれて見ることができませんが、必ず存在します。
調光ユニットが分電盤と違うのは、
分電盤の機能に加えて、更に「外から信号をもらって、電圧をいじって、明るさを変える機能」も持つ、という点です。

(ユニットの画像はLite-Puter社のDX-1220という機種です。大きな劇場では部屋いっぱいに調光ユニットがある部屋があります。)
主幹ブレーカから電気をもらって、スポットライトに分けてあげています。これは分電盤、分岐ブレーカーと同じ役割です。
一方、図の下の方から、「調光信号」と書かれた緑色の線が繋がっています。
この「調光信号」は「何番の調光回路は明るさを○○にせよ」という命令を送り続けています。
復習になりますが、ここで調光信号を出す機器が「調光卓」です。
本番中に操作するのは調光卓です。
調光卓からの命令を受け取った調光ユニットは、「はいはい、○番の調光回路はこれくらいね」と言って電圧をいじります。
このように、調光ユニットは「分電盤の役割を果たしつつ、調光する装置」であると言えます。
※「電圧をいじる」は、とりあえず「100Vを50Vやら85Vやらいろんな電圧に変えるんだ」という理解でいいと思います。一応、高校物理を修めた(交流電圧がサインカーブであることを知っている)方向けに「調光された交流電圧の波形」を載せます。上が調光前、下が調光後です。サインカーブを切り刻んでいます。
劇場でない場所では、調光ユニットはどうするの?
ところで、
劇場ではない場所でやる時はどうするのでしょう?
「公演会場を把握しよう」の記事を読んでいただければ分かると思いますが、時には劇場でない場所で、舞台照明を必要とする演目をするかもしれません。
仮設舞台を想定している野外音楽堂や吹き抜けの広間などは、主幹ブレーカーだけ用意されていることが多いので、調光ユニットを持ちこめばよいのですが……
そうじゃない場合、例えば学校の教室などではどうするのでしょうか?
うーん…どうするのか…
もっともリーズナブルな答えは、
普通のコンセント(※)で使える調光ユニットを使う、ことです。
※舞台照明では特殊な形状のコンセントを使うことがあるので、「普通のコンセント」はその形状(2本の刃が平行に並んでいる)から「平行」「II型」「二型」などと呼ばれています。
電気的には、下の図の位置に調光器が来ればいいわけですね。しかもできればあまり場所を取らない小型の。
この「普通のコンセントで使える」調光ユニットを実現するにはいろいろと方法があります。
たとえば、自作するとか。
こちらやこちらの方などは立派な調光器を自作していらっしゃいます。
私が卒業した高校にも、3回路の自作調光器が2台ほどあり、文化祭などの時に使っていました。
他に、スライダック(↓)と呼ばれる可変変圧器の一種(ダイヤルを回すことで、100Vを0~130Vまでの好きな電圧に変えることができる)を使う方法(たしか、『ザ・スタッフ』という高校演劇向けの書籍にこれが載っていました)や、
家庭用調光スイッチを照明卓っぽく組み立てる方法(↓)
などが考えられてきました。
これらはいずれも、「調光ユニット一体型の調光卓」にあたります。
しかしこれらの方法は、
- 自作…手間がかかる、技術が必要
- スライダックや調光スイッチ…高価(1回路につき数千円必要)、操作性が悪い(そりゃそうだ、元々舞台照明用じゃないもんね)
などの問題があります。普通の教室などで公演をする時は、こういう環境で頑張るのも1つの手段です。
DMX信号対応の、小型調光ユニット!
ところが、
時代の変化とは恐ろしいもので、
最近ではこんなものが売られています。
「既製品で、安価で、小型で、普通のコンセントから取れて、DMX信号(デジタル調光信号)に対応している調光ユニット」
です。
上の写真はELATIONというメーカーのCYBER PAKという製品で、ここで13,800円で売っています。
まあなんと恐ろしいことに、
↓こんな小さなシステムで最低限の調光はできてしまいます。↓
これは前回の記事の最後に出てきた模式図ですね。調光ユニットの機種が違いますが、役割は同じです。
まあ、ここで紹介したのはいずれも海外の安いメーカーのものなので、あんまり綺麗なフェードイン・フェードアウトはできないのですが、上手に付き合えばコストパフォーマンスは圧倒的です。
台湾のLite-Puter社の調光ユニットは、ちょっとだけ高いけど性能は良いです。
学校の教室や普通の民家では、そんな感じで調光ユニットを確保しているのです、というお話でした!
次回は、【調光の基礎知識】編のラスト、「調光回路の数え方」です。
→次の記事を読む


コメント