年末ですが、DoctorMXのコンソールフェーダーからキューシートを叩く時の新しい方法を思いついたので共有します。(「キューシートからコンソールを叩く」ではないことに注意してください)
こんなシチュエーションありませんか?
前提として、「電気マグロ流・DoctorMXの使い方」で解説したような、コンソールをメインのキュースタックとして利用する使い方を想定しています。
この使い方では稀に、コンソールのフェーダーを使ってキューシートを操作したくなることがあります。分かりやすい例で言うと、ムービングライトをごく少量 (2~4台程度) 使っていて、メインの進行はコンソールで行いつつ、特定のシーンのみキューシートで「機種別コントローラー」のシーンを叩きたい場合など。
他には、業務用プロジェクターのシャッター操作等をRS-232Cで行うとき、「シリアル」機能をキューシート経由で叩くこともあるでしょう。
これ (キューシートをコンソールから叩くこと) 自体は、2016年頃にDoctorMX ver4.2.3 から追加された機能で、「OSC」機能を使って、アドレス /csdmx 宛てにDMXを送信することでキューシートをトリガーすることができます。 (公式マニュアル参照)
しかし、この機能は以下のような問題があります。
- キューシート上の1キューを再生するたびにコンソールの1チャンネルを消費する (チャンネル利用効率が悪い)
- キューシート上のキューはすべて明示的にトリガーしないと動かない&止まらないので、コンソールをすべて0にしているのにキューシート経由で引っかけた機能が止まっておらず、暗転にならない等の事故が起こる (「暗転」キューを再生するためのチャンネルを上げる、という本末転倒の事態が起こる)
これらを解決するために、「コンソール上の1chから、その値に応じて色々なキューをトリガーする」需要が考えられます。すなわち、コンソール上の Ch. 100 をキューシート操作用とし、その値が 0~20% の時は暗転キューを、21~40%の時はキューAを、41~60%の時はキューBを、……というようにしたいわけです。
そのための方法を考えました。
流れ図の分岐
「電気マグロ流・DoctorMXの使い方 – コンソールでチェイスを操作する」の記事で紹介したように、OSC機能を使うと流れ図を途中で分岐できます。
ここでは、コンソール #1 を本番進行用の「本卓」として、その直後に OSC #1 → OSC #2 で分岐。分岐先のOSC #3 から /csdmx に送信してキューシートを叩くことにしましょう。

この状態では、本卓コンソールのCh.1を上げるとキューシートのD1「暗転」が再生され、チャンネル2を上げるとD2「シーンA」が再生される状態になっていると思います。
このままでもコンソールからキューシートを操作できている状態ですが、前述したようなチャンネル効率の問題と、暗転シーンをわざわざ再生しないと暗転されない問題が残っています。
パッチからのアッテネーター (カーブ変更)
1つのチャンネルを複数のキューに使うために、分岐先の流れ図に「パッチ」を入れます。ここでは本卓のCh.10を、出力側の1・2・3にパッチします。
この状態では、本卓のCh.10を上げるとキューシートのキューD1, D2, D3を同時に再生しようとして、結果としてはD3「シーンB」だけが再生されることになると思います。これでは意味がないので、パッチの後段に「アッテネーター」も入れます。

アッテネーターは、意味としては「減衰器」で、流れ図の上流をせき止める水門のような動作 (音響ミキサーのフェーダーに近い概念) をするのですが、別の機能として調光カーブを編集する機能が付属しています。
たとえば、LED PARの調光カーブがハロゲンと合わない場合などに、補正するためのカーブを入れたりすることができます。このカーブは、画面上でカーブを引っ張って編集することもできますが、CSVを読み込んで精密に設定することもできます。


このカーブ補正機能をパッチと組み合わせると、パッチ前のチャンネルの値に応じて、どのチャンネルがONになるかを選択することができます。つまり、チャンネルの値 (範囲) をチャンネル番号に変換することができるのです。

※「100になる」は「100%になる」or「255になる」の誤記
この状態にして、試しに本卓のCh.10を上げ下げしてみましょう。値に応じて異なるキューが再生されていることがわかります。

これによって、当初の課題であった
- キューシート上の1キューを再生するたびにコンソールの1チャンネルを消費する (チャンネル利用効率が悪い)
- キューシート上のキューはすべて明示的にトリガーしないと動かない&止まらないので、コンソールをすべて0にしているのにキューシート経由で引っかけた機能が止まっておらず、暗転にならない等の事故が起こる (「暗転」キューを再生するためのチャンネルを上げる、という本末転倒の事態が起こる)
という2点は両方とも解決されました。
少し手順が複雑ですが、覚えておいて損はないと思います。
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