照明仕込み図を描く時に、プレゼンテーション用アプリであるPowerPoint (パワーポイント、パワポ) が割と使いやすいという話です。私は2017年以降、パワポで仕込み図を描いています。
※なお、照明仕込み図の描き方(お作法、マナー)自体は、この記事では触れません。描き方から知りたい方は、以下の記事をお読みください。
- 照明仕込み図の描き方 ― 当ブログ内記事
- 初心者のための照明仕込み図の描き方|くらげ模様
一般的に照明仕込み図に使われるソフト
パワポの話をする前に、業界全体としてどのようなソフトが使われているのか簡単に紹介します。
- Vectorworks Spotlight (ベクターワークス スポットライト)
Vectorworks自体は建築図面などにも使われるいわゆるCADですが、Spotlightという舞台照明に特化したエディションが存在します。灯体数を自動で数えるなど便利な機能があり、プロの舞台照明業界ではデファクトスタンダードとなっています。 - Adobe Illustrator (イラレ)
印刷物やWebデザインに使われることの多いイラレですが、仕込み図に使っている人も結構います。 - Inkscape
イラレに似た機能を持つ無料のソフトです。私は2013年~2016年頃までこれをメインに使っていました。
上記のうち、最初の2つ(ベクターワークスとイラレ)については非常に高価なソフトであり、学生劇団のようなアマチュア照明スタッフには手が出ない点、また不正なライセンス認証突破(いわゆる“割れ”)が蔓延している点が問題視されています。
こうした現状を踏まえ、フリーのCADアプリを使ってどうにか照明図面を作れないかと考察している方もいらっしゃいます。
例)フリーのCADソフトで、仕込み図は書けるのか試してみる|くらげ模様
仕込み図ドローイングソフトに求められる機能
さて、ではなぜ私がパワポを使うかという話ですが、その前に、仕込み図を描くために求められるアプリケーションソフトの機能について整理したいと思います。
- 画面表示と印刷がズレないこと
これは大前提です。時々、Excelを使って描いておられる方がアマチュアを中心にいらっしゃいますが、Excelは伝統的に印刷がズレるので、推奨しません。 - ベクター画像を取り扱えること
ベクター画像とは、拡大・縮小を繰り返してもぼやけたり劣化したりすることのない、線描の計算式で作られた画像データを指します。フォントと同じように、大きく拡大して印刷してもギザギザ、ボヤボヤになることがありません。灯体記号をはじめ、図面上の記号はベクター画像で作ることが望ましいため、これに対応したソフトが必要です。 - 直感的に扱いやすいこと
CAD系のソフトは、有名な JW_CAD に代表されるように、極めて独特の操作系を持っていることがあり、習熟のための訓練が必要です。Vectorworks や AR_CAD などは比較的使いやすい方ですが、難しい人には難しいでしょう。 - 縮尺の機能はさほど重要ではない
CAD系のソフトの大きな特徴として、縮尺の概念を扱えることが挙げられます。つまり、現実世界の寸法(mm)を入力しても、図面上の縮尺(1/50、1/100など)に合わせて勝手に縮小してくれるので、現実世界の寸法をそのまま扱えます。
これは建築図面や舞台美術の図面では非常に重要な機能なのですが、照明仕込み図にとってはそれほど重要ではありません。
照明で縮尺を使うのは、せいぜい灯体記号の大きさくらいです。あまり小さく記号を配置すると現実世界で吊り込めないというトラブルが発生しますが、気持ち大きめの記号を使うなど、アバウトな対策で十分です。
なぜパワポか?
私がパワポを使う理由は、上記の条件を「だいたい」満たしているからです。決して完璧ではないですが、印刷はズレませんし、emf形式のベクター画像を扱えますし、そこそこ直感的に扱えます。
それに、パワポならではの便利機能もあります。
たとえば、「表」の機能を使って灯体の記号凡例を簡単に作ったり、
図形の「テキストの編集」で、六角形の囲み数字を簡単に作れたり。
※「六角形の囲み数字」は、舞台照明では回路番号を示すために使われます。
そういうわけで、私は大学の論文発表や会社のプレゼンでパワポを使い慣れていることもあり、「パワポで図面書くのもアリだな」と思っているわけです。
特に、大学生の皆さんはPCにパワポが入っていることも多いと思います。
ひょっとしたら、意外と「アリ」かもしれませんよ。
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