調光器 (調光ユニット) の「数え方」って?

調光卓と調光ユニットの役割は分かったとして、 いざ実践しようとすると、「調光ユニットってどうやって“数える”んだ?」という問題にぶち当たります。

大きなホールなどでは、100発くらいの灯体を別々に操作できますが、調光ユニットは地下など別の場所にあって見ることができません。
じゃあ、サスバトンのコンセントを1単位として数える……?

一方、当ブログでもたびたび紹介している、下のような仮設小型ユニットの場合は?
サウンドハウス等では「4チャンネルの調光ユニット」などのように表現されていますが、数える単位は「チャンネル」で合っているのでしょうか?

このブログをはじめ、いろいろな場面で、「調光回路が何回路で…」という表現を見聞きすると思います。でも、「調光回路」って、いったい何なのでしょうか?

そのあたりについて、解説を試みてみたいと思います。

目次

調光ユニットの最小単位は「ディマー」

先に言ってしまうと、調光ユニットを細分化して数える単位は「ディマー (dimmer)」です。
鳥が1羽、2羽なら、調光ユニットは1ディマー、2ディマーと数えてください。

…嘘です。

いや、本当かもしれません。

なぜこのような言い方になるかというと、「実際には数え方は『1ディマー、2ディマー』が最も適切と思われるが、現場としては浸透していない」からです。
「ディマー番号」という用語はあるので、帰納的に、単位としても「ディマー」が正しいはずですが、数える場合は「24チャン(ネル)の調光ユニット」などの単位で数えています。

しかし、後述しますが、「チャンネル」といった表現は本来別の意味があって誤解を招きやすいので、

この記事では、「調光ユニットの最小単位を示す単位」として「ディマー」を導入します。

調光ユニットを分解すると

ディマー」という単位を理解するために、調光ユニット「DP-DMX20L」を見てみましょう。

kairo3
DP-DMX20Lのコンセントは8口ある

見ての通り、コンセントは8口(くち)ありますよね。
しかし、これはあくまで「コンセントの口数」であって、「ディマー」という単位とは関係ありません。

この調光ユニットのディマー数は、「4ディマー」です。
8個コンセントがあるのに4?どういうことなのでしょうか?

ここで、この調光ユニットの蓋を開けて、中の部品を見てみましょう

triac

矢印をつけた小さな電子部品が4つ見えます。

こいつが、なんと調光をしている張本人なのです。こんな小さな電子部品が電気をいじくって、明るさが変わっているのです。

この部品を、トライアックと言います。

triac3
トライアック (半導体部品)

このトライアックが無いと調光はできませんから、トライアックの個数=「ディマーの数」と言えます。

この調光ユニットにトライアックは4個入っています。よって、「ディマーの数=4ディマー」と言えるわけです。

1つのトライアックから2口のコンセントに並列につながっているので、合計8口のコンセントが出ているわけです。
コンセントの数は8だが、ディマーの数は4」だと言う理由がお分かりいただけたでしょうか。

ついでに、このトライアックという部品が、「つないでよい灯体のワット数」も決めています。トライアックは最大電流値が決められており、どんなに太い電線を使っても、トライアックの性能を超える電流を流してしまうと、トライアックが壊れてしまい調光できなくなります。

「この劇場は1ディマー20A (≒2kW) までだからね!」と言われたら、1つ1つの回路のトライアックがそれ以上耐えられない、ということです。
(実際はトライアックの限界より少し低い容量のブレーカーやヒューズなどが挟まっていて、トライアックが壊れる前に落ちるようになっています。)

ちなみに、ここで出てきた調光ユニット「DP-DMX20L」は、1ディマーにつき5A(≒500W)までです。
復習ですが、コンセントが8口あるからと言って、「コンセント1口につき5A」ではありません。理由はもうお分かりですね。

ディマー、という言葉

トライアック自体を指して「ディマー」と呼んでも間違いではないですが、トライアックは調光以外にも使われるただの電子部品です。

「ディマー」という言葉自体の定義はもう少し広く、
1つ1つの調光回路の心臓部分となる、「トライアックと、その周辺の制御回路 (回路基板や電子部品)」を総合して、「ディマー」と呼びます。

英語の dim (~を薄暗くする、調光する)に er (~する者)を付けて、 dimmer です。 「ここが調光の心臓部分だぞ!」という意識がよく現れた言葉です。

ディマーユニット」と言うと、「調光ユニット」と同じ意味になります。「調光ユニット=ディマーユニット」は、「ディマー」がたくさん集まって1台の機器になったもの、と言えばイメージしやすいでしょうか。

トライアック、ディマー、調光ユニットの関係イメージ図

また、「ディマー番号」という言葉もあり、こちらは数える単位の「1ディマー、2ディマー」よりもかなり一般的な用語です。 仕込み図やパッチ表では 「Dim. No.」 などと表記されます。

DMX調光ユニットの場合、1ディマーにつき1つのDMXアドレスを割り当てるので、多くの場合「ディマー番号」と「DMXアドレス」は同じ番号となります。

公共ホールなどでは、ディマーとコンセント番号が1対1で対応するようになっており (dimmer-per-circuit 方式)、調光卓の画面表示として「1SUS-1」などのコンセント番号が見えることがあります。この場合でも、内部的にはDMXアドレスが割り振られていますが、そのホール内ではDMXアドレス、ディマー番号、コンセント番号のどれで呼んでも一意に定まるので、コンセント番号で呼ばれることが多いです。

ディマー番号は「何ではない」か

最後に、ディマーを取り巻くややこしい概念について整理するために、ディマーは何「ではない」か、を述べます。
少し発展的な内容です。
この辺りはパッチ強電パッチの記事を併せてご覧いただくと、より理解が深まるかと思います。

ディマー番号は「回路番号」ではない

この記事の改稿前、「1ディマー、2ディマー」の代わりに「1回路、2回路」という単位を使っていましたが、これは紛らわしいので撤回のうえ、注釈します。
「ディマー」と「回路」は明確に異なる概念です。

そもそも電気施工の文脈における「回路」は、下の図の赤点線のところを指します。
dimkairo1
この図は一般家庭の電気配線の図です。分岐ブレーカーから壁・天井内配線を通って電灯に至る、ここまでが「1回路」です。
コンセントの場合は、何も差さっていないと厳密には「回路」が成立しませんが、便宜的にコンセントまでの部分を「1回路」とします。


では、劇場の場合はどうかと言うと、やはり分岐ブレーカーから壁・天井内配線を通ってサスバトン等のコンセントに至る、ここまでが「1回路」です。
dimkairo2
この図だけを見ると、ディマーと回路を区別する必要が無いように思えますが、それは「たまたま施工上、ディマーと回路が同じ数で、1対1に固定されているから」です。
たまたま、と言っても、日本の公共ホールのほとんどがこの施工方法なので、ホールの現場レベルでは「回路番号(=コンセント番号)」と「ディマー番号」を混同して呼んでも支障ありません。


しかし…、「ディマー」と「回路」の対応を変更できる場合があります。それは「強電パッチ」という作業を行う場合です。
dimkairo3
このような仕組みになっている劇場では、必ずしも「ディマーNo.1」が「コンセントNo.1」に対応するとは限らない (任意に変更できる) ため、ディマーと回路は明確に区別する必要があります。


強電パッチ盤のあるホールは古いホールが多いですが、ホール以外の仮設現場でもこれに類似した作業を行う必要があるため、やはりディマーと回路は明確に区別する必要があると言えます。

ディマーは「チャンネル」ではない

「チャンネル」もあいまいな用語と化しています。
実際、通販サイトの説明では、この記事で使った「4ディマーの調光ユニット」に相当する意味で「4チャンネル調光ユニット」という表現がなされます。

dimkairo_soundhouse

他に良い表現が無いのでこれはこれで間違いではないです。最初に述べましたが、現場レベルでも、「24ディマーの調光ユニット」とは言わずに「24チャンユニット」と言ったりします。

しかし、厄介なのは、調光卓の操作単位としても「チャンネル」という用語が使われることです。

いわゆるパッチ表で「Ch No.」と「Dim No.」が出てくる場合、「Ch (チャンネル)」は「調光卓のフェーダー番号」の意味になります。ノンフェーダー卓・ムービング卓の場合は、個別フェーダーに相当する最小操作単位の番号となります。
ch_hookup

こちらも、調光卓にパッチ機能が無い場合は、「チャンネル番号」と「ディマー番号」が同じになってしまうので、特に簡易なパッチ無し卓を使っている初心者が混乱に陥りやすいところです。
概念上、区別するものだということを知っておかないと、苦労するかもしれません。

以上、長くなりましたが、「ディマー」をめぐる概念の話でした。

これで調光卓・調光ユニット周りは説明しきった……かな?

画像出典

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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