ダクトレール (配線ダクト、ライティングレール) と呼ばれるレール状のコンセントは、美術館やおしゃれなカフェで多く見ることができます。
非劇場空間での公演の場合も、このレールがあればPAR36程度の軽めの灯体や小型の調光ユニット (DP-415など) を取り付けることができるので、一気に本格的な舞台照明を作れるようになります。よって、非劇場空間での公演を行う場合、下見の際にダクトレールの有無は必ずチェックします。
今回のテーマは、「ダクトレールかと思ったら違った」、つまりダクトレールと互換性の無い、珍しいレールコンセントに出会った話です。
【公演データ】
本番時期:2017年9月
公演名: 夢ノ島の冒険#1『伝説の野人キンピラゴボ・ウパパは実在した!?古代遺跡コナ・ミスポーツ・ジムの謎に迫る、約6000秒のデスゲーム!』
会場: RAFT
筆者の立場: 照明プランナー兼オペレーター
仕込み図: (クリックで拡大)
【テーマについて】
当然ダクトレールだろうと思っていたら、違ったのです。下見の段階で会場の管理スタッフの方に教えていただいたので対策を取ることができましたが、ぶっつけで小屋入りになっていたら危なかった……
こちらの会場の天井に配備されていたのは「ギャラリーライン」。仕込み図で青の二重線で示したように、会場を囲むように設置されています。
ギャラリーラインはPanasonicの商品名で、これに対し普通のダクトレールは「ショップライン」という商品名が付いています。
ギャラリーラインと普通のダクトレールの違いは、断面図を見れば一発で分かります。
(クリックで拡大)
簡単に言えば、レールが2段構造になっていて、2回路を1本のレールで流すことができます。照明用語で言えば、「2chマルチ」がレールになったような配線器具です。
灯体側には切替えスイッチが付いていて、上段・下段どちらのレールから電源を取るか選択することができます。
こちらの会場では、Lite-Puterの DX-626A (6ch調光ユニット) が常設されており、うち4回路はこのギャラリーラインに、残りの2回路はミニC型コンセントで出ている状態でした。
仕込み図にはいくつか持ち込み機材が掲載されていますが、これはダクトレールプラグを使って、ギャラリーラインに取り付けました。寸法に互換性が全くないので電源は取れませんが、引っ掛けること自体は可能と管理の方に教えていただき、試してみて落下の危険性も無さそうだったためです。
更に、結局出番はありませんでしたが、万が一レールから電源を取りたくなった時のために、ギャラリーラインプラグ♂⇒平行♀ という変態変換コードを作って持ち込みました。
……この「ギャラリーラインの♂プラグだけ」を見つけるのに大変苦労しました。
結局、「ファクトライン30」という工場機械向けの規格がギャラリーラインと互換性があることが分かり、こちらのプラグであればヤフオクで中古が出ていたので安く手に入りました。(ファクトライン30と互換性があることを突き止めるのに、数時間かかりました……)
ちなみに、普通のダクトレールは「ファクトライン20」という規格と互換性があるようです。
なんでこんなにレールコンセントに詳しくなっているんだ……?
非劇場空間での公演は、色々な知識が要求されますね……(しみじみ)
【その他コメント】
- 地明かりには会場備品のギャラリーライン用スポットライトを使用しましたが、電球がレフランプだったのでかなり光が広がってしまい、エリア分けの明かりを作るのに苦労しました。ソケットがE26だったので、ビーム電球を買ってきて「電球だけ持ち込み」をしても良かったかな、と思います。
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