先日ダクトレールについての記事を書きましたが、もっと身近な天井照明設備として「引っ掛けシーリング」というのがあります。おそらくほとんどのご家庭でシーリングライトの取り付けに使われている、下の写真のようなコンセントです。
これもダクトレールと同様、耐荷重・許容電流の許す範囲で舞台照明の設置に使うことが可能です。
引掛シーリングについて
引っ掛けシーリングとは、正式名称を (引掛) シーリングローゼットといい、JIS規格:JIS C 8310に定められた配線器具です。耐荷重や取り付け場所によって角形・丸型・「つば」の付いたもの・付いていないもの、平行プラグを差し込めるコンセントが付いているもの・付いていないもの……、様々な形態がありますが、上の写真にもある「い」の形をした差込口が特徴的なソケットです。
詳しくはWikipedia「引掛シーリング」の記事に詳しく書いてあるので読んでみてください。
ダクトレールと同じく、照明器具の吊り下げ (機械的接続)、電源の供給 (電気的接続) を兼ねた配線器具ですが、ダクトレールと違ってレール状になっていないので、1つの引掛シーリングには1台の照明器具しか取付できません。
もっぱら、ご家庭の天井照明 (シーリングライト) の取り付けに使用されていると思います。
▲Panasonic「HH-CB0838A」カタログ写真
舞台照明としての使い方
ダクトレールではなく引掛シーリングが配備された公演スペースはほとんど存在しないため、舞台照明に転用する機会は無いかもしれませんが、ごく稀に使うことがあるので2種類の使い方を紹介します。
- ダクトレールに変換して使用する
ELPA (朝日電器) が、引掛シーリングダクトプラグという、器具1個分の小さなダクトレールに変換するプラグを販売しています。
パッケージ写真の絵の通り、オス側が引掛シーリングプラグ、メス側がダクトレールになっているので、これを使えばダクトレール用の灯体を1台だけ吊ることができます。 - 灯体に引掛シーリングプラグを付ける
全くオススメしませんが、下の写真のような感じで、灯体のダボの代わりに引掛シーリングプラグを付けて使うという手もあります。写真では Panasonic WG7061「角形引掛シーリングロック付キャップ」をM8のボルトで灯体に取り付けています。
ただ、この方法だとボルトが中空ボルト (貫通ボルト) にでもならない限り、引っ掛けることはできても電気を取る手段がありません。そこで、ロック付キャップのロック部分を取り外す改造をして、空いた隙間からどうにか電線を出しています。ボルトも金属製なので漏電しないよう絶縁にはかなり気を使いました。プラグ部分はプラスチック部品なので、金属ボルトで締め込んでいる点に無理があります。乱雑な環境で数年放置していたら、気が付いたらプラグが割れていました。何らかの衝撃で割れてしまったのでしょう。舞台照明用バトンと違って落下防止ワイヤー等を付けられないので、こうした破損リスクがある以上はこの方法は推奨できませんね。
実践例
引掛シーリングが配備されている公演会場なんて存在するの?と思われるかもしれませんが、過去に1ヶ所だけ遭遇したことがあります。実例を紹介しましょう。
▲最初に紹介した、ダクトレールに変換した上でダクトレール用の灯体を取り付けている様子です。こちらの方が安全性・利便性ともに良いです。
▲こちらは灯体に直接引掛シーリングキャップを付ける方法で取り付けられています。灯体はフレネルですが、150Wの非常に小型な灯体を使っているので、一般的な大きさのフレネルでは決して真似しないでください。(通常、天井ソケット側の耐荷重は3~5kgです)
この公演会場は少し昔の市民会館に付属している公民館のような場所で、開館当時は宴会にも使うつもりだったのでしょう、申し訳程度のミラーボールとミラーボール宛てのスポットライト (松村電機 SPOX-II) が天井に取り付けられていました。これらの器具自体は引掛シーリングに吊られているわけではなく直接ボルト吊りになっていたのですが、電源だけ引掛シーリングから取られていたのです。
会場下見の際にこの様子を見て「これはしめた」と思い、急いで機材の準備をして仕込みました。当然仕込みの際には、原状復帰を前提にミラーボールとSPOXは取り外させていただきました。
写真で分かる通り、これ以外は至って普通の集会室であり、通常であればトップの地明かりが作れない場所です。
この方法を編み出したことで、明るさは弱いながらも本格的な地明かりを作ることができ、照明表現の幅が大きく広がったと自負しています。
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