調光卓のパッチ方法

※「パッチ」とは何なのかご存じでない場合、まずは「パッチって何だろう」の記事をお読みください。

※※この記事で言う「パッチ」とは、すべていわゆる「ソフトパッチ」のことを指します。ソフトパッチ以外のパッチ方法として「強電パッチ」がありますが、それについては別の記事で扱います。

 

照明仕込み作業のうち、「パッチ」と呼ばれる作業の実際について解説します。

「パッチ」はあくまで調光卓の機能なので、実際のところ「調光卓の機種によって異なります」としか言えないのですが、頑張って解説します。

 

目次

フェーダー番号とディマー番号の対応を作る

「パッチって何だろう」の記事で解説した通り、パッチとは「フェーダー番号とディマー番号を結びつける」ことです。

 

要するに上の画像のような結び付け作業ができれば良いのです。

ということは、

  • 「フィーリングカップル」みたいな画面を調光卓に表示して、
  • タッチパネルで結び付ける

ようにすればベストか?と思うのですが……

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↑「フィーリングカップル」

 

技術的な問題もあって、これを実現している調光卓はごく少数です。(PC卓のDoctorMXなど)

そこを何とかするべく、調光卓メーカーは機種ごとにいろいろな「パッチ設定モード」を考えてきました。

代表的なパッチの仕方を、数種類紹介します。

(1) すべてテンキーで行う方法

要するに「ディマー番号」と「フェーダー番号」を入力できればよいので、0~9までの数字を書いたキーボードがあれば可能ですよね。

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↑松村電機「F153」のパッチ用テンキー。「LEVEL」という表示があるが、これはフェーダーレベルの上限値を決める機能。「パッチレベル」と呼ばれ、最近の調光卓には多く搭載されている

 

この方法は単純ですが、「どのフェーダーに何をパッチしたか忘れてしまいがち」という問題があります。

そこで、ある程度大きな表示画面を持つ機種では、リスト形式でディマー番号:フェーダー番号の対応を一覧表示してくれるものが多いです。
PAP_0001

↑松下電工「パレータス」のパッチ一覧画面。「DIM」がディマー番号、「CH」がフェーダー番号。

(2) コンセントの位置から選ぶ方法

市民会館ホールなど、常設の劇場にある固定設備では、いろいろな場所に「照明用コンセント」が伸びていますが、これらのコンセントはディマーに直接つながっている場合が多く、「コンセント番号=ディマー番号」と言えます。

 

ということは、もはや「ディマー番号」は「1,2,3,4…」という単純な番号ではなく、「下手の床コンセントA,B,C…」「第1サスバトンの…」など、「コンセントの位置」で呼ぶことができるようになります。

 

このような「ディマー番号=コンセントの位置」となる劇場では、

  • 調光卓の画面にコンセントの位置を表示して、
  • コンセントの位置をマウスやキーボードで選び(=ディマー番号を選んだことになる)、
  • それをパッチしたいフェーダー番号を選ぶ

という方法が使われます。

marionet_patch
↑丸茂電機「マリオネットスター」のパッチ画面。「ホタル」など見慣れない名前が並んでいるが、「ホタルの1、ホタルの2、……」という名前のコンセントがある劇場だから、このようになる。
コンセントの位置にほぼ対応しているので、画面の左―右=舞台の下手―上手、画面の上―下=舞台の奥―手前。

「どこのコンセントに繋いだ灯体か」が分かりやすいので、直感的な方法といえます。

 

(3) フェーダーや、ボタンを触る方法

テンキーや大きな表示画面は場所を取るので、大劇場向けの大型調光卓でないと使えません。

そこで、小型の調光卓では、フェーダーと最小限のボタンだけでパッチ機能を実現しています。

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上に示したのは「ELATION / シーンセッター」のパッチ方法ですが、

  • 「UP」「DOWN」の2つのボタンでディマー番号を選び、
  • それをパッチしたいフェーダーの下のボタン(フラッシュボタン)を押す

という方法を使っています。

また、「ライトコマンダー」や「ベリンガー / LC2412」では、

  • 先にフェーダーの下のボタンを押し、
  • そのフェーダーで操作したいディマー番号をダイヤルで選ぶ

という方法を使っています。

lc2412_patch

「フェーダー番号を先に選ぶ」というパッチ方法です。

「フェーダーの下のボタン」が無い場合は、フェーダーそのものを触る(少し動かす)こともあります。

ここに紹介した以外の操作方法もあると思いますが、これ以上はさすがに「機種によって異なります」としか言えません。あしからず。

パッチ作業の流れと用語

実際のパッチ作業の流れとしては、以下のようになります。

  • 仕込み前に、フェーダー番号とディマー番号の対応表を作っておく
    (吊り込み図の中に書き込んでもよいし、別紙で用意してもよい)
    (初めて行く劇場などで、ディマー番号が予測できない場合は、空欄にしておく)
    common_soft_new←吊り込み図に書き込む場合
    hookup←別紙で用意する場合
  • 吊り込み(灯体設置)中に灯体の位置やディマー番号に変更があった場合、メモしておく
    (空欄にしていた場合は、仕込みながら書き込んでいく)
  • 調光卓へ行き、調光卓のパッチモードに入る
  • 作成した対応表を見ながら、ディマー番号:フェーダー番号の対応を入力
    (ディマー番号を選んだ時に、それを点灯してくれる親切な調光卓もある)
    ※劇場スタッフの方にやってもらう場合は、ディマー番号とフェーダー番号のどちらを先に言った方がよいか確認しておく(上で紹介した通り、ディマーを先に選ぶ場合とフェーダーを先に選ぶ場合の2種類があるので)
  • 完成したら、フェーダー1番から順番に点灯してみて、間違いが無いか確認

 

また、パッチ作業に関係する専門用語もあります。

  • パッチを払う…一旦決めたパッチを解除する。リセットする。英語では “open” “clear” など。
  • 1対1パッチ(ストレートパッチ)…「フェーダー番号=ディマー番号」になるようなパッチ。パッチ機能が無い調光卓と同じ状態にすること。灯体をどのディマーに差したか分からない場合などに、この状態にして調べることがある。

 

 

【画像出典】
フィーリングカップル…http://www.net-hp.co.jp/shop/html/products/detail.php?product_id=13
パッチ用テンキー…筆者撮影
パレータスのパッチ一覧画面…筆者撮影
マリオネットスターのパッチ画面…マリオネットスターの取扱説明書
http://www.marumo.co.jp/dataservice/pdf/console/marionet_star_v61.pdf
シーンセッターの画像…シーンセッターの取扱説明書
LC2412の画像…LC2412の取扱説明書
http://www.behringer.com/assets/LC2412_P0058_M_JP.pdf
「吊り込み図に書き込む場合」…筆者自作
「別紙で用意する場合」…筆者自作 (月面クロワッサン番外公演『無欲荘』にて、実際に使ったもの)

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この記事を書いた人

高校演劇~大学の学生劇団で照明を経験し、現在は会社員の傍らアマチュアで舞台照明を継続。第39回日本照明家協会賞舞台部門新人賞。非劇場空間の劇場化、舞台照明の歴史が得意。

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